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相関/因果関係を示せるほどの統計データはおそらくないはずですが、理屈の上から「太陽や月が赤く見えるのは地震の前兆現象」という仮説があるのは事実です。
その可能性については否定しませんが、主観や記憶を頼りに比較する程度の観察結果から我々が実用的な地震予知情報を得ることは不可能です。その理由は以下の通りです。
そもそも地平線近くの超低空の太陽や月は、赤く見えるのが普通ですが、まずはその原理からおさらいする必要があります。詳しい説明はこちら
http:homepage3.nifty.co●m/ueyama/sky2/skycolor.html
(●を削除)
をご覧頂くとして、要約すれば、気体の分子やエアロゾル粒子など、光の波長より十分小さい物質によるレイリー散乱によって、太陽や月の光のうち青み成分が失われるため赤く見える現象、これがベース知識です。
一方、地震前兆説は、地震前兆により地表から吹き出した水蒸気分子やエアロゾル粒子が、上記レイリー散乱を増加させるために赤みが増す、という仮説です。一見、筋が通っていそうですね。
まず、水蒸気分子の増加で、我々が気づくくらい「通常の赤みよりもさらに赤みを増す」ことについて軽く想像してみましょう。レイリー散乱を起こす水蒸気分子が「非常に長い距離にわたって」あるいは短い距離なら「非常に高密度」に増えた状態でなければなりませんね。次に、陸地の上に見える夕日と、大海原の上に見える夕日とでは、光路に含まれる水蒸気分子の量は、具体的な数値はさておき、圧倒的に違うことは容易に想像がつきますが、その違いを赤みの違いとしてどの程度認識できるでしょうか?あるいは、大海原から蒸発する水蒸気量と、地震前兆により噴出する水蒸気量は、どのくらい違うでしょうか?
一方、大気中のエアロゾル粒子の浮遊量ですが、もともと人間の消費活動や気象条件によって大きく変動するものですから、その変動を除外して比較しなければなりません。
以上を考えると、この仮説は、実用性のない机上の空論といえます。
といった前提をふまえた上でなお、この仮説を信じる/信じない、は個人の自由ですが、インターネット上で「赤い月」を異状現象として報告する人の多くは、そもそも低空の月が赤く見えるのが普通の現象であること自体ご存じなかった、という事例を私は数多く経験していますので、その点もご留意ください。
…とはいえ、今後当面は「前兆では?」といわれる現象報告の有無にかかわらず、余震や誘発と考えられる大地震に対する備えを解けない時期がしばらく続きますので、安心です、と言ってる訳ではありません。
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